猫の尿石症(尿路結石)に注意!症状・原因から治療・予防まで徹底解説
2025/06/09

猫が頻繁にトイレに行き少量の尿しか出ない、血尿が見られる場合、尿路結石(尿石症)の可能性があります。猫の尿石症はストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石が代表的で、食事療法や外科手術での治療が必要です。症状や原因、治療法と再発予防策について詳しく解説します。
猫の尿石症(尿路結石)に注意!症状・原因から治療・予防まで徹底解説
猫が頻繁にトイレに行き少量の尿しか出ない、血尿が見られる場合、尿路結石(尿石症)の可能性があります。猫の尿石症はストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石が代表的で、食事療法や外科手術での治療が必要です。症状や原因、治療法と再発予防策について詳しく解説します。
尿石症(尿路結石)とは?猫にできる結石の種類
尿石症とは、腎臓から尿道まで続く尿路のどこかに「尿石(結石)」と呼ばれる固い石ができてしまう病気です。尿中のミネラル成分が過剰になったり尿のpHバランスが乱れたりすることで結晶が発生し、それらが集まって結石になります。結石の大きさは砂粒程度からクルミ大まで様々で、できる場所によって腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石などと分類されます。猫の尿石症自体は珍しい病気ではありませんが、尿道が詰まると命に関わる危険な状態になるため注意が必要です。
猫にできる結石の種類は複数ありますが、中でも発生件数が多いのはストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)とシュウ酸カルシウム結石の二つです。これらはそれぞれ形成されやすい条件や治療法が異なります。
ストルバイト結石:リン、マグネシウム、アンモニウムから構成される結石で、尿のpHがアルカリ性に傾くと形成されやすくなります。猫では細菌感染を伴わずに発生することが多く、主に食事内容が大きく影響すると言われています。ストルバイトは尿を酸性に調整することで溶かすことが可能なため、療法食による食事療法や調整剤の投与が有効です。発症年齢は1~6歳の若い猫に多い傾向があります。
シュウ酸カルシウム結石:シュウ酸とカルシウムからなる結石で、尿のpHが酸性に傾くと形成されやすい種類です。一度できてしまったシュウ酸カルシウム結石は食事で溶かすことができません。小さな結石であれば尿と一緒に自然排出されるのを待ちますが、そうでなければ外科手術で物理的に取り除く必要があります。好発年齢は7~11歳の中高齢期に多いとされています。
なお、猫では他にもシスチン結石や尿酸塩結石などが報告されていますが頻度は低く、まずは代表的なストルバイトとシュウ酸カルシウムへの対応が重要になります。
猫の尿石症の原因
尿石症の発症には食事や生活習慣、体質など様々な要因が関与します。主な原因として、猫が食べるフードの内容や飲水量、遺伝的な体質などによって尿中のミネラルバランスや尿のpHが乱れることが挙げられます。以下に主要な原因を詳しく見てみましょう。
ミネラルバランスの偏り(マグネシウム過剰など)
キャットフード中のミネラル成分の過剰は尿石形成の大きな要因です。とくにマグネシウムやリン、カルシウムなどの含有量が多すぎる食事は注意が必要です。例えばマグネシウムが豊富なフードを食べ続けていると尿のpHがアルカリ性に傾き、ストルバイト結晶・結石ができやすくなります。一方でカルシウムやシュウ酸を多く含む食事は尿を酸性に傾け、シュウ酸カルシウム結石のリスクを高めます。また、塩分(ナトリウム)の過剰摂取は喉の渇きを促しますが腎臓に負担をかける可能性もあるため、総合栄養食以外の過度なおやつや人間の食べ物は避けましょう。
飲水量の不足
水を飲む量が少ないことも尿石症の大きな原因となります。猫は元々砂漠出身の動物であり、少ない水分で濃い尿を作る体質です。そのため室内飼いの猫でもあまり水を飲まずに済ませてしまう傾向があります。しかし飲水量が不足すると尿は濃くなり、尿中のミネラル濃度が高くなって結晶が析出しやすくなります。さらに濃い尿が膀胱内に長時間留まると結晶同士が集まりやすく、大きな結石へと発展するリスクが高まります。特に冬場は気温の低下で猫の飲水量が減りやすいため注意が必要です。
その他(尿のpHバランス、遺伝要因など)
上記以外にも、以下のような様々な要因が尿石症の発症リスクに関与します。
尿のpHバランス異常:尿石は尿のpH環境に大きく左右されます。尿がアルカリ性に傾くとストルバイト結石、酸性に傾くとシュウ酸カルシウム結石が形成されやすくなります。食事内容や代謝の問題で尿の酸性度が適正範囲から外れると、結石ができる下地が生まれてしまいます。
猫の体質・遺伝的要因:猫ちゃん自身の体質や品種による影響も指摘されています。例えばスコティッシュフォールドやヒマラヤン、アメリカンショートヘアなどはシュウ酸カルシウム結石ができやすいという報告があります。また一度尿石症になった猫は体質的に再発しやすい傾向があります。
性別(オスのリスク):尿石症自体はオス・メスどちらの猫でも起こりますが、オス猫は尿道が細く長いうえ途中にカーブがあるため、結石が詰まってしまうリスクが高いです。メスよりも尿道閉塞(尿道の詰まり)を起こしやすく、重症化しやすい傾向があります。
細菌感染(膀胱炎):尿道から膀胱に細菌が入り膀胱炎を起こすと、その炎症によって尿石症が引き起こされる場合もあります。特に高齢のメス猫などで尿路感染症を契機にストルバイト結石ができるケースがあります。普段からトイレを清潔に保ち膀胱炎を予防することも、尿石症の発症リスクを下げるのに役立ちます。
ストレスや環境要因:引っ越しや来客、大きな物音、多頭飼育による緊張などストレスも泌尿器の健康に影響します。ストレスがかかると猫の免疫力が低下し、尿石症にかかりやすくなると考えられています。またトイレが気に入らず我慢してしまう環境も良くありません。排尿回数が少ない(尿を長時間我慢する)ほど膀胱内の尿は濃縮され結石ができやすくなります。猫が安心して頻繁に排尿できる環境作りも大切です。
以上のように、尿石症は食事・水分・生活環境など日々の管理と密接に関係しています。「若いからまだ平気」「うちの子は大丈夫」と油断せず、普段から愛猫の食事内容や飲水量、トイレの様子に気を配ることが予防につながります。
尿石症の症状(血尿・頻尿・尿閉など)
尿石症になると、初期には症状がはっきりしない場合もありますが、多くは膀胱炎と似た症状が見られます。代表的な症状を挙げます。
頻尿・少量の排尿:トイレに行く回数が増えますが、一回の尿量は普段より少なくなります。膀胱が結石や刺激で炎症を起こすため、何度もトイレに行きたくなるのです。しかし膀胱にはあまり尿が溜まっていないので、少しずつしか出ません。
血尿や尿の濁り:尿に血が混ざってピンク色や赤茶色に見えることがあります(血尿)。結石が尿路を傷つけ出血するためです。また膀胱内の炎症や膿で尿が白く濁る場合もあります。
排尿時の痛み・排泄時の異変:おしっこをする時に痛みのため鳴き声を上げることがあります。排尿姿勢をとっても少ししか出ず、トイレからなかなか出てこない、あるいは落ち着きなく出入りを繰り返す様子もよく見られます。苦痛や我慢の限界で、トイレ以外の場所で粗相してしまうこともあります。排尿後に陰部や下腹部をしきりに舐める仕草も、違和感や痛みのサインです。
尿が出ない(尿閉):最も注意すべき症状が尿道閉塞による尿が全く出ない状態です。特にオス猫で結石が尿道に詰まるとおしっこが一滴も出せなくなります。猫は何度もトイレに行って力みますが尿は出ず、苦しそうに落ち着きがなくなります。この状態を放置すると体内に老廃物や毒素が蓄積して尿毒症を起こし、嘔吐や食欲不振、昏睡など命に関わる深刻な容態に陥ります。完全閉塞から24時間以上尿が出ないと非常に危険ですので、少しも尿が出ない様子を見たら緊急事態と考え、すぐに動物病院へ連れて行ってください。
膀胱や尿道に結石があると、猫は頻繁にトイレに行って踏ん張りますが一度の排尿量が少なくなり、血尿や痛みで鳴くこともあります。特にオス猫は尿道が細く結石が詰まりやすいため危険度が高く、早期対処が肝心です。以上のような症状に気付いたら、迷わず獣医師に相談してください。
尿石症の診断方法(尿検査・画像診断)
尿石症が疑われる症状がある場合、動物病院では以下のような検査を行います。
尿検査(尿分析):尿を採取して、pHや潜血反応の測定、顕微鏡による結晶の有無の確認を行います。ストルバイト結晶やシュウ酸カルシウム結晶が見つかれば尿石症の診断に役立ちます。また白血球や細菌が検出されれば尿路感染の有無もわかります。尿中に結晶が出ている段階であれば、まだ結石になる前兆として早期発見・治療のチャンスになります。実際に石ができている場合は、その結石の成分分析を行い種類を特定します。
画像診断(レントゲン・超音波):X線検査(レントゲン)により膀胱結石の存在や位置、大きさを確認します。ストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石はレントゲンに比較的はっきり映るため、多くの場合画像で診断可能です。ただし尿路の結石が小さすぎる場合やレントゲンに写りにくい種類の石(例:尿酸塩結石など)の場合もあるため、超音波検査(エコー)も併用します。超音波ならば小さな結石や腎臓・尿管内の結石も発見しやすい利点があります。必要に応じて造影剤を使ったレントゲン検査やCT検査が行われることもあります。
身体検査・その他の検査:触診により膀胱の大きさや痛み具合を確認します。尿道閉塞が疑われる場合はカテーテル(細い管)が通るか試みることもあります。また結石による腎臓への負担を評価するために血液検査で腎機能の指標を見る場合もあります。結石が確認された際には、手術で摘出した石を専門機関で分析することで正確な結石の種類や成分を調べることもあります。
尿石症の治療法(食事療法・手術による結石除去)
猫の尿石症に対しては、症状の程度や結石の種類に応じて内科的治療(食事療法・投薬など)と外科的治療(手術による摘出)を組み合わせて行います。主な治療法は次のとおりです。
食事療法(療法食による結石溶解):軽度の尿石症で主にストルバイト結石の場合、まずは療法食への切り替えによる治療を試みます。ストルバイトは尿を適度に酸性化する処方食で溶解できる可能性があります。尿石症用の療法食はミネラルバランスを調整し、水分摂取を促す成分設計となっており、結石の溶解や結晶の自然排出をサポートします。療法食の効果を最大限にするため、治療中はおやつや他のフードを与えず処方食だけを続けることが重要です。なお、シュウ酸カルシウム結石は食事で溶かすことができないため、食事療法は再発予防や小さな結晶の排出促進が主な目的になります。
薬物療法(投薬による治療):細菌感染が関与している尿石症では抗生剤の投与が行われます。膀胱炎を併発している場合は炎症を抑える抗炎症剤が使われることもあります。また尿路の痙攣を抑える鎮痙剤や鎮痛剤で症状を緩和する処置が取られることもあります。薬を処方された場合、症状が改善しても自己判断で中止せず獣医師の指示通り最後まで投与を続けることが大切です(途中でやめると再発や耐性菌のリスクがあります)。
カテーテルによる尿道閉塞の解除:結石が原因で尿道が詰まってしまっている場合、まずは尿を出せるようにする緊急処置が最優先です。麻酔下で尿道にカテーテル(細い管)を挿入し、閉塞部位まで通して尿を排出させます。この際、可能であればカテーテルで結石を膀胱側へ押し戻し(尿道から一旦結石を引き返させて膀胱に戻す)、尿道の通りを確保します。膀胱に長時間尿が溜まっていた場合、一時的に排尿機能が低下していることもあるため、数日間カテーテルを留置して膀胱の負担を減らす処置を行うケースもあります(その際はエリザベスカラーで猫が管を舐めないよう保護します)。カテーテルで尿道が通ればひとまず危機は回避できますが、結石自体を除去しないと再び詰まる恐れが高いため、引き続き原因結石への治療を進めます。
以上のように、尿石症の治療は症状の緩和と結石そのものの除去が二本柱です。特に尿道閉塞の兆候がある場合は一刻を争いますので、「排尿できる状態にする処置」→「結石を溶かす・取り除く治療」の順で進められます。早期に適切な処置を受ければ多くの猫は回復しますので、飼い主さんは落ち着いて獣医師と相談しながら治療を進めましょう。
尿石症の再発予防策(療法食の継続・水分摂取)
尿石症は再発率が非常に高い病気です。一度治っても50~80%の確率で再び石ができるとも言われています。そのため、治療後も継続的に再発予防に取り組むことが大切です。日頃から次のようなポイントに気を付け、愛猫の尿路の健康維持に努めましょう。
療法食・適切な食事管理の継続:結石が治った後も油断せず、再発防止用の食事を続けることが肝心です。獣医師から処方された尿石症対応の療法食を一定期間与え、尿のpHやミネラルバランスを安定させます。再発しやすい体質の子の場合は、一生涯療法食を続けたほうが良いケースもあります。市販のフードを与える際も成分表を確認し、マグネシウム・リン・カルシウムなどが過剰でないバランスの良い総合栄養食を選びましょう。サプリメントやトッピングを与える場合も、ミネラル過多にならないよう注意が必要です。
水分摂取を増やす工夫:多めの水分摂取は尿を薄めて結晶形成を防ぐ最重要ポイントです。ウェットフードを積極的に取り入れたり、フードに水やスープを混ぜるなどしておしっこの量を増やす工夫をしましょう。飲み水はいつでも新鮮なものを用意し、猫が興味を持つような工夫も効果的です。例えば複数の水皿を家の数カ所に置いたり、流水式の給水器を使うのもおすすめです。実際に猫は流れる水を好む傾向があり、蛇口から出る水を飲みたがる子もいます。冬場は冷たい水よりぬるま湯を用意するなど、季節に応じて飲水量が増える工夫をしてあげましょう。
トイレ環境の見直し(排尿を我慢させない):猫が好きな時にスムーズに排尿できる環境を整えることも重要です。トイレは常に清潔に保ち、嫌がらず使えるようにします。多頭飼育の場合は\\「猫の頭数+1個」のトイレを用意し、トイレ待ちや奪い合いが起きないようにしましょう。家の中に複数のトイレと複数の経路を確保することで、猫がおしっこを我慢せずにすぐ行けるようにします。トイレの場所や砂の種類にも好みがあるので、愛猫がリラックスして排泄できる環境づくりを心がけてください。
適度な運動・肥満予防:日頃から適正体重を維持し、肥満を防ぐことも尿石症予防につながります。太りすぎの猫は飲水量や排尿頻度が少なくなる傾向があり、結石リスクが高まるといわれます。食事量をコントロールし、おやつの与えすぎに注意しましょう。遊びや運動でカロリー消費を促し、室内でも運動不足にならないように工夫します。適度な運動はストレス発散にもなり、一石二鳥です。
ストレスの軽減:環境の変化や飼い主さんの留守番時間増加など、猫にストレスがかかる状況では体調を崩しやすくなります。できるだけ安心できる生活リズムを保ち、遊びやスキンシップでリラックスさせてあげましょう。ストレスが減れば飲水量や排尿習慣も安定し、尿石症予防に良い影響があります。
以上の予防策を組み合わせて実践することで、尿石症の再発リスクを大きく下げることが期待できます。完璧に防ぐのは難しい病気ですが、飼い主さんの工夫次第でかなり予防・軽減が可能です。
まとめ(食事管理と水分補給で再発予防)
猫の尿石症は一度発症すると再発しやすい病気ですが、適切な食事管理と水分補給の工夫で予防と再発リスクの軽減が可能です。日頃から愛猫のトイレ習慣や飲水量に注意し、少しでも異常を感じたら早めに動物病院で検査・相談を受けましょう。症状が軽いうちに対処すれば、食事療法などで愛猫の負担も少なく済みます。
大切な“うちの子”の健康を守るためにも、この記事で紹介した予防策をぜひ生活に取り入れてみてください。尿石症は完全に防ぐのが難しいとはいえ、飼い主さんのケアによって再発を抑えることができます。愛猫が快適に過ごせるよう、これからも食事とお水に気を配ってあげましょう。
当院の対応(東京23区、品川区・港区など):尿石症かな?と感じたら放置せず、まずは獣医師にご相談ください。
当院では東京23区(品川区・港区エリアなど)で猫の尿石症を含む泌尿器トラブルの診療に対応しています。尿検査や画像診断による的確な診断、治療まで一貫して行い、飼い主様と愛猫をサポートいたします。地域の皆様の大切な猫ちゃんの健康管理に寄り添い、再発予防まで見据えたケアを提供しておりますので、尿石症について不安がありましたらお気軽に当院へご相談ください。