猫の血尿は要注意！考えられる原因と治療法を徹底解説

血尿とは？猫のおしっこに血が混じる状態

猫の血尿とは、文字通りおしっこに血液が混じった状態を指します。通常の猫の尿は淡黄色ですが、血尿になるとピンク色や赤色に変色して肉眼で確認できます。

ごく少量の出血で色が変わらない場合でも、尿検査で赤血球が検出される「顕微鏡的血尿」と呼ばれるケースもあります。

いずれにせよ、尿に血が混じるのは体からの異常のサインです。また、稀にトイレを長時間我慢した後に尿が濃くなって茶色っぽく見えたり、食べ物の色素で赤っぽく見えることがあります。

これらは必ずしも血尿ではありませんが、区別が難しい場合は早めに動物病院で診察を受けることをおすすめします。日頃から愛猫の尿の色や量をチェックする習慣をつけ、少しでも異変に気付いたら注意深く観察しましょう。

猫が血尿を起こす主な原因

猫のおしっこに血が混じる原因の多くは、膀胱や尿道など下部尿路のトラブルによるものです。代表的な原因には次のようなものがあります。

特発性膀胱炎（ストレス性膀胱炎）

特発性膀胱炎は、明確な原因が特定できない膀胱炎のことで、猫の血尿原因の中でも特に多いタイプです。近年の研究では、環境の変化や多頭飼いによる緊張などストレスが大きく関与していることがわかっています。血尿や頻尿といった症状が出ますが、細菌感染や結石は認められません。再発しやすいものの、ストレス軽減や適切な食事療法で症状が落ち着くケースが多いです。

尿石症（ストルバイト結石など）

尿石症とは、尿中のミネラル成分が結晶化して結石（石）を形成する病気です。猫の尿路結石としてはストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石が代表的です。結石や細かな結晶が膀胱や尿道の粘膜を傷つけることで炎症が起こり、血尿の原因となります。特に雄猫では尿道が細長いため、結石の破片や結晶が詰まりやすく注意が必要です。尿石症の場合、血尿以外にも頻尿や排尿痛が見られ、結石が大きい場合には触診やレントゲンで膀胱内に石が確認できることもあります。

尿道閉塞（オス猫で見られる重症例）

尿道閉塞とは、尿道に結石やタンポ（結晶や蛋白の塊）が詰まって尿が全く出なくなる緊急疾患です。特にオス猫で発生しやすく、上記の尿石症や特発性膀胱炎が悪化した結果として起こることがあります。雄猫の細い尿道は詰まりやすく、閉塞すると急性腎不全に陥る可能性があり、大変危険です。排尿しようとトイレに頻繁に行くのに一滴も出ない、苦しそうに鳴く、お腹が張る、といった場合は尿道閉塞を疑い、一刻も早く動物病院で処置を受ける必要があります。

その他（腎臓病や膀胱腫瘍など）

腎臓や膀胱そのものの病気が原因で血尿が出ることもあります。例えば腎臓病になると尿の生成や排出に異常をきたし、尿に血液が混じる場合があります。高齢の猫では膀胱内に腫瘍（膀胱腫瘍）ができて出血を起こし、慢性的な血尿が見られるケースもあります。

血尿に伴って見られる主な症状（頻尿・排尿時の鳴き声など）

血尿が出ている猫には、尿の色以外にも様々な症状が現れることが多いです。具体的には以下のような症状が見られます。

• トイレに何度も行くが、一度に出る尿の量が少ない（頻尿）

• トイレで長時間いきむが、なかなか尿が出ない

• トイレ以外の場所で排尿してしまう（粗相）

• 排尿時に痛がって鳴く

• おしっこがポタポタと少量ずつ垂れる

• 尿に血が混じってピンク色や赤色に変わる

• 全く尿が出なくなる（尿閉）

• 元気や食欲が低下し、嘔吐が見られる（重症例）

こうした症状に気付いたら要注意です。特に雄猫で尿が出なくなった場合は命に関わる緊急事態ですので、すぐに動物病院へ連れて行ってください。

猫が血尿したときの飼い主の対処法

愛猫の排泄に血が混じっているのを発見したら、飼い主さんは落ち着いて以下のように対処しましょう。

• 猫の様子と症状の確認: いつから症状が出ているか、1日に何回トイレに行っているか、そのうち何回血尿が出たか、排尿時に痛がっていないかなど、できるだけ詳細に観察します。

• 排尿状態の確認と受診判断: 尿が少しでも出ているか確認します。少量でも出ていれば緊急度は下がりますが、血尿が出た場合は念のため早めに受診しましょう。一方、トイレに行っても全く尿が出ない場合は尿道閉塞の可能性が高く、夜間でもすぐに動物病院に連絡する必要があります。

• 尿のサンプルを持参: 可能であれば、猫砂を使っていない状態でおしっこを少量採取し、病院に持参してください。新鮮な尿があればその場で尿検査が可能になり、原因解明に役立ちます。難しい場合は血尿のついた猫砂やシーツの写真を見せるだけでも構いません。

• 水分補給を促す: 猫が水を飲めているようなら、ウェットフードを与えるなどして水分摂取量を増やす工夫をしましょう。ただし尿が出ていない場合は無理に飲ませず、直ちに受診してください。

動物病院で行われる検査・治療

動物病院では、まず問診と触診で猫の状態を確かめたうえで、尿検査やエコー検査（超音波）、レントゲン検査などが行われます。尿検査では尿中の赤血球の有無だけでなく、結晶や細菌の有無、尿のpH値などを調べ、感染症か結石症か、それとも特発性膀胱炎かを判断します。画像診断（エコー・レントゲン）によって膀胱内の結石や腫瘍の有無、腎臓の状態なども確認します。

治療法は原因や症状の重さによって異なります。例えば細菌性の膀胱炎であれば抗生剤を用いた内科治療が中心となります。一方、ストルバイト結石など尿石症が確認された場合は、尿石を溶解するための療法食による食事療法を行います。結石が大きかったり尿道に詰まっている場合は、カテーテルで尿道を洗浄して結石を取り除いたり、外科手術で結石を摘出する処置が必要になることもあります。

尿道閉塞を起こしている場合は、何よりもまず膀胱に溜まった尿を排出させなければなりません。麻酔下でカテーテルを尿道に入れて閉塞物を除去し、膀胱内の尿を排出させます。重症時には針を使って膀胱から直接尿を抜く処置を行うこともあります。閉塞が長時間続いて腎不全に陥っている場合は、静脈点滴など全身の治療も必要です。

膀胱炎や軽度の血尿なら内科的な対症療法と生活環境の改善で回復を目指します。必要に応じて鎮痛剤や抗炎症剤を使い、ストレスが原因の場合は環境調整やサプリメントが検討されます。

再発予防のための生活ケア（食事・ストレス対策）

下部尿路の病気は再発しやすいため、日頃の生活環境を見直し、予防と再発防止に努めることが大切です。まず療法食の継続など食事管理を徹底しましょう。食事を元に戻すと約半数で再発するとの報告もあります。併せて肥満にならないよう体重管理も大切です。

水分摂取を十分にさせる工夫も重要です。新鮮な水をいつでも飲めるよう給水場所を工夫し、流水を好む猫にはファウンテンを設置するのも良いでしょう。また、食事にウェットフードを取り入れることで尿量が増え、膀胱内を清潔に保てます。

さらにストレスの少ない環境作りにも配慮しましょう。トイレは常に清潔に保ち、猫が排泄を我慢しないようにします。十分な遊びや運動の時間を確保し、猫が安心できる静かな寝場所や隠れ場所も用意してあげましょう。環境の変化（引っ越しや新しい家族の迎え入れなど）はできるだけ段階的に行い、猫に過度な負担をかけないようにします。

こうした生活ケアを続けることで、膀胱炎や尿石症の再発リスクを減らし、愛猫の泌尿器の健康を守ることができます。

まとめ（異変に気付いたら早めに受診を）

猫の血尿は見逃せない重要なサインです。

放置すれば命に関わる状態に進行する恐れもあるため、早期発見・早期治療が何より大切です。おしっこの色や量の些細な変化でも、「様子を見よう」と先延ばしにせず、迷わずかかりつけの獣医師に相談してください。適切な治療を受ければ、膀胱炎や尿石症といった病気も多くは回復が見込めます。大切な愛猫の健康を守るため、飼い主さんの日頃からの観察と迅速な対応を心掛けましょう。

当院では東京23区（品川区・港区など）を中心に猫の診療に対応しており、血尿を含む泌尿器のトラブルについて迅速かつ丁寧に治療いたします。

経験豊富な獣医師が飼い主さまのお話を親身にうかがい、最適な治療とケアをご提案いたしますので、愛猫のことで気になる症状がございましたらお気軽にご相談ください。