犬のクッシング症候群—原因、症状、治療、予後まで獣医師が徹底解説|動物医療センターPeco高輪台院
2024/12/31
犬のクッシング症候群—原因、症状、治療、予後まで獣医師が徹底解説|動物医療センターPeco高輪台院
クッシング症候群とは?
犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、副腎から過剰なコルチゾールが分泌されることによって引き起こされる慢性疾患です。コルチゾールは体内のストレス応答や代謝調整に重要な役割を果たしますが、過剰な状態が続くと健康に深刻な影響を与えます。特に中高齢犬で発症することが多く、早期の診断と治療が重要です。
犬クッシング症候群の原因—なぜ発症するのか?
クッシング症候群の主な原因は以下の通りです:
下垂体腺腫(約80〜90%の症例)
下垂体に腫瘍が発生し、副腎を過剰に刺激することでコルチゾールの分泌が増加。
副腎腫瘍(約10〜20%の症例)
副腎そのものに腫瘍ができ、コルチゾールを直接過剰分泌。
医原性クッシング症候群
ステロイド薬の長期使用による副作用。
これらの原因が複合的に作用する場合もあります。
犬クッシング症候群の初期症状—見逃しがちなサイン
クッシング症候群の初期症状は緩やかに進行するため、見逃されることが多いです。以下の症状に注意してください:
多飲多尿:水を大量に飲み、排尿回数が増える。
お腹が膨らむ(ポットベリー):腹部が異常に膨らむ。
脱毛:特に胴体部分の毛が薄くなる。
皮膚が薄くなる:傷つきやすくなる。
食欲増進:通常以上に食欲が旺盛になる。
症状が進行すると以下の状態が現れることがあります:
慢性の皮膚感染症
筋力低下や運動不耐性
呼吸が浅く速くなる
犬クッシング症候群の診断方法
クッシング症候群の診断は以下の検査を組み合わせて行います:
血液検査:アルカリホスファターゼ(ALP)の上昇やコルチゾール値を確認。
尿検査:尿比重の低下や尿中コルチゾール-クレアチニン比の測定。
ACTH刺激試験:ACTHを注射し、コルチゾールの反応を測定。
低用量デキサメタゾン抑制試験:コルチゾール分泌の抑制能を評価。
超音波検査:副腎の大きさや腫瘍の有無を確認。
犬クッシング症候群の治療—質の高い管理と治療
クッシング症候群の治療は原因と病状に応じて異なります。治療には高度な専門知識が求められます。
1. 内科的治療
トリロスタン
副腎でのコルチゾール生成を抑制する薬。
投与量は犬の体重や症状に応じて慎重に調整されます。
副作用として食欲不振や嘔吐、下痢が発生する場合があるため、定期的なモニタリングが必要です。
モニタリングと効果測定
定期的な血液検査とコルチゾール値の確認が推奨されます。
2. 外科的治療
副腎腫瘍の場合の副腎摘出術
完全な治癒が期待できる場合があります。
手術には高度な技術が必要であり、術後管理が重要です。
副腎摘出後はホルモン補充療法が必要になる場合があります。
3. 医原性クッシング症候群の管理
ステロイド薬の使用を慎重に減量または中止し、他の治療法を併用して症状をコントロールします。
4. 生活管理
食事療法:低脂肪、高品質のタンパク質を含むフードを推奨します。
運動量の調整:犬の体力に合わせた適切な運動を取り入れます。
ストレス管理:犬がリラックスできる環境を整えます。
犬クッシング症候群の予後—治療しない場合と治療した場合
治療を受けた場合
適切な治療と管理により、多くの犬が2年以上の良好な生活を送ることが可能です。
下垂体性クッシング症候群では、トリロスタン治療の効果により、症状が緩和し、生活の質が向上します。
副腎性クッシング症候群の場合、外科手術が成功すれば、完全な治癒が期待できます。
治療を受けない場合
症状が進行し、高血圧や糖尿病、腎不全などの重篤な合併症を引き起こします。
急性膵炎や肺血栓塞栓症などのリスクが増加し、命に関わる状況に至る可能性が高まります。
余命は数ヶ月から1年未満になることが一般的です。
長期的なケアの重要性
定期検診:治療開始後も3〜6ヶ月ごとに診察を受け、状態をモニタリングします。
生活の質を高める工夫:食事や運動、ストレス管理に配慮し、犬が快適に過ごせる環境を提供します。
犬クッシング症候群と食事—食べてはいけないもの
高脂肪食品:膵炎リスクを高める可能性があります。
高ナトリウム食品:高血圧を悪化させる可能性があります。
糖分の多い食品:糖尿病のリスクがある場合には厳禁。
推奨される食事
高品質なタンパク質を含むフード。
低脂肪・低炭水化物の療法食。
オメガ3脂肪酸を含むサプリメント。
犬クッシング症候群の末期症状—注意すべきサイン
末期には以下の症状が現れることがあります:
重度の脱水
呼吸困難
持続的な嘔吐や下痢
食欲不振と著しい体重減少
昏睡状態
この段階では緩和ケアを優先し、犬が快適に過ごせる環境を整えることが重要です。
まとめ
犬のクッシング症候群は、早期発見と適切な治療によって進行を抑え、生活の質を向上させることが可能です。
定期的な検診や生活環境の整備を通じて、愛犬の健康を維持し、快適な生活を提供することが飼い主の重要な役割です。
動物医療センターPecoでは、専門的な診断と治療を提供し、愛犬と飼い主様を全力でサポートいたします。お悩みがあればお気軽にご相談ください。